今回は、「家庭では何も気にならないのに、学校ではなぜ過ごしづらいのだろう?」 を考えていきます。
※このサイトでは、できるだけ実践できる身近な支援や環境づくりを中心に公開しています。
そのため学術的な裏付けの有無ではなく、実際の学校現場で効果があった支援方法やツールを紹介しているので、ご承知おきください。
目次
家と学校では、子どもにとってそんなに違うのか?
「うち(家庭)では何の問題もないのですが…」と言う保護者の方がけっこうおられます。
おそらく、おうちの中では大人が無意識にその子の行動をカバーし、不自由さを減らしているのではないかと思います。
家族とはは最も身近な人の集団ですから、心地よく過ごすために自然に身についている人間の知恵なのでしょう。
子どもが健やかに成長するためには、『家庭』というやすらげる居場所があることが、非常に重要なことだと児童心理の方では考えています。
もしかしたら、おうちの中では大人が知らないうちにその子の行動をカバーし、不自由さを減らしているのかもしれません。そういうのびのびできる環境では、子供自身も素直でいられるのでしょう。
家庭では親が自然と子どもの過ごしやすい環境を作っているからであり、そういう落ち着いた環境では、子供が困る状況も起こりにくいから気づきにくいのです。
ところが学校生活では、集団の中の一人として様々な場面で他の子どもと共に、仲間として時間を過ごすことが、主体になります。
子どもたちはそれぞれ、家庭とは異なる環境に少しずつ適応していかなければなりません。
残念ながら、なかには、入学早々からこの集団適応につまずいてしまう子どもがいます。
つまり、幼児期に比べ子どもたちは様々な個性の子どもがいる学校という集団になかで過ごす時間が圧倒的に増えるため、入学してから「あれ?何か他の子と違うのかな~?」と保護者が気になり始めるケースがとても多いのです。
- 時間の区切りで、行動や気持ちが変えられる
- 順番を待つことがてきる
- 大人の話を静かに聞くことができる
- なかまと譲り合って道具を使う
- 一緒に行動する(並ぶ、移動する)
- 持ちものを整理できる
- 食べ物の好き嫌いがあまりない
これらの基本的な生活の習慣が身についていないと、子ども自身が入学早々から困った状況に置かれることになります。
おうちではさせてもらえたことも、学校生活では我慢しなければならない場面が、かなり増えるはずです。
登校してもお母さんと離れがたく泣いている子や、登校渋り気味になり毎朝お母さんが苦労する子は、ほとんどがこの集団適応の段階でのつまずきになっています。
子どもの集団適応力に差があるから目立つ
発達の問題を考えるとき、重要なものは何かが、現場にいて少しずつ見えてきました。
それは「こどもによって環境への適応力に差が出る」ということです。
幼児期から学童期への移行や、家庭と学校でのルールのちがいをすんなり受け入れられる子は、学校生活への適応がうまくいきます。
ところが、新しい環境への適応力がまだ十分に育っていない子どもたちにとっては、学校生活はわからない約束事が多くて窮屈さを感じたり、居心地の悪さを強く感じてしまうのです。
時折、一年生の子がこんなことをつぶやいているのを耳にします。
『ようちえん(ほいくえん)のときは、すっごくほめてもらえたのに、がっこうってほめてくれないんだもん!』
『あ~ぁ、早くおうちにかえりたいよ~。』
もしも、このようなことを我が子から聴いたら、親としては不安になりますね。
「なんでうちの子は、こんなことを言うんだろう?」
「なにか、いじめとかにあっているのではないだろうか?」
と心配になると思います。
しかし、その原因はお子さんがまだ学校生活にうまく適応できていない場合がほとんどです。
周りの子どもたちが徐々に学校生活に慣れていくなか、まだ適応できない子どもが目立ってしまうのは当然のこと。
そして、この数年間でこのような適応しづらいお子さんがどんどん増えてきつつあります。
集団適応しづらい場合には、発達の凸凹があることが多い
子どもが学校での集団生活に適応しづらい状況を関係図で考えてみました。
このようなマイナスのスパイラルが生じてしまうこともあります。
特に自分の気持ちをなかなか言葉で伝えられない子どもにとっては、このような日々が続くとかなりつらいと思います。
このように、学習面では問題ないのに、集団生活への適応が難しい子の場合には、もしかしたら子どもの発達状態に凸凹があるからではないかと考えてみる必要があります。
出来るだけ早く、学級担任と相談しながら、より子供にあった対応をしていくことが求められます。
同時に、少しでも不安があるのならば、保護者ご自身も発達の問題に対して、関心を持ってください。
保護者が早めに気づき、適切な対応をされたご家庭では、周りの子ともうまく関われて、お子さん自身の成長も促進していきます。
一方、保護者が発達の問題に否定的だったり無関心だったご家庭では、二次障害とも言える様々な問題が、学年を上がるにしたがって現れてきます。
発達の凸凹には、時間をかけてゆっくり取り組む親の姿勢が大事
一口に「発達の凸凹」と言っても、子どもにより千差万別です。
ですから、ひとつずつ丁寧に取り組むことが、困難さをふやさないためのカギとなります。
そのために保護者が心掛けてほしいことを挙げておきます。
- スクールカウンセラー(SC)などに相談する
- 発達に関する書籍を読む(SCがお勧めしてくれます。)
- 利用できる支援のシステムを知る
- 通級、巡回指導、支援学級などから我が子に適する支援を探す
- 我が子にあった声掛けや環境づくりを、積極的に学ぶ
- 不安がらず、我が子を信じて、愛情深く見守る
おうちの方にこのような心掛けがあると、お子さんはおうちで安心して気持ちの穏やかさを取り戻すことができます。
もしかしたら、周りの子や兄弟姉妹より、成長していくのに少し多めな時間が必要になるかもしれません。
でも、「この子はゆっくり育つ子なんだ」と理解してあげてください。
そういう親御さんの大きな愛情が、一番子どもにとっての手助けになります。
まとめ
今回お伝えしたのは、発達の凸凹が家庭内ではあまり目立たないということ でした。
- 学齢期になって環境が変わり、次第に目立つようになるケースが多いこと
- こどもの環境への適応力が十分に育っていないために起こること
- 適応させるのに必要なことを親が一緒に学んでいく姿勢が大事であること
- ゆっくり育てるつもりでおおらかに見守ってほしいこと
なお、具体的な支援の方法を知りたい方は下記で承っておりますので、ご相談ください。
保護者が知りたいのは検査の結果?それとも子どもの状況?
発達の遅れや凸凹が気になっていても、保護者が本当に知りたいのはどんなことでしょうか。
おそらく検査結果や数値、ましてや診断名ではないはずです。
「親がサポートしてやれるのはどんなことなのか?」
「どのようなことをすれば、子どもが困っていることを減らせるのか?」
保護者としてこのようなことを知りたいのは、当たり前です。
発達の問題を抱えた子どものよりよい将来のために、発達の問題にきちんと向き合い取り組む必要がある。
そのためには、本人だけでなく周囲の環境づくりが非常に重要になってきます。
さらに、できるだけ年齢が低いうち、つまり低学年からスタートすることでもっとも効果があがるのです。
たっぷり時間をかけて、子どもの状況に合わせた丁寧な関わりが必要です。
時間と特別な配慮を必要とする発達の問題を抱えた子にとっては、学校教育の中だけでは、機会が十分ではありません。
やはり学校生活では、同年代の集団の中での動きが多いので、困難さをもろに感じてしまうことも多いのです。
学校ではおうちのように、言葉で伝えなくても気落ちをくみ取ってくれる人ばかりではありません。
その子にとって必要な生活習慣・学習習慣や環境に慣れていく体験は、おうちでも経験を積んでいくことが大事です。
保護者やおうちの方がお子さんの状況を把握し、受け止めて、落ち着いて対応していくことが、すべての基本になります。
ですから、たとえ小さな積み重ねであろうと、おうちでもコツコツと続けることは、やがてお子さんの自信につながることを、ぜひご理解ください。
出来そうなやり方から、始めていただければよいと思います。
無理やり押しつけるのではなく、長い目で見て、忍耐強く、お子さんとの絆を深めるために試みていただければ、なにか糸口が見つかると思います。
別の記事で「言葉につまずきのある子」の背景について考えてみましたので、今回はそれぞれの背景に沿った対応策をいくつかご紹介していきます。
≪背景を考える≫セクションでは、次の4項目を挙げていきました。
- 「書き」(書字)の問題
- 「読み」(識字)の問題
- 「意味」(理解)の問題
- 「伝達」(コミュニケーション)の問題
これらの問題に手がかりとなりそうなキーワードをいくつか挙げてみます。
≪書き:書字≫の問題は「視機能」「協調運動」が大事
お子さんの書く字は次のいずれかの癖がありますか?
- 書いていくうちに字が曲がってしまう
- 枠内に収まらず、はみ出す
- 書き続けるうちに字が重なってしまう
- クネクネとして読みにくい
このような特徴や癖がある場合、視機能に関係している可能性が強いです。
視機能とは「視力」とは異なる≪見る力≫に関する機能で、「両眼の運動機能」や「視覚情報処理機能」を含んでいます。
上記に挙げたような特徴のある字を書く子の場合、この視機能が十分に育っていない場合があります。
視機能はビジョントレーニングを行なったり、視機能専門の眼科医に受診して必要な医療的処置を考えてもらうことで、改善することができます。
まだ眼の周りの筋肉が柔らかい幼児期~低学年期に眼球を動かすトレーニングをすることで、字体がかなりよくなった事例がいくつもあります。
また視機能の他に、手の協調運動も関係している場合が少なくありません。
手の協調運動とは、いわゆる「ぶきっちょさん」に代表される細かい作業やていねいな作業を苦手とする子によく見受けられるものです。
主に関節の可動範囲が狭かったり、関節の動きそのものが硬いことが原因で、思うように鉛筆が動かせない状態と言えます。
とても不思議な鉛筆の持ち方や書き方をする子は、何らかの協調運動の問題を抱えていると言えます。
曲がったり、はみ出したりする子に「汚い字を書くのは不注意だから!」と言って注意ばかりしても、視機能や協調運動の面を改善していかないと、子どもだけの力では直せません。
やがて「書くこと自体が嫌いになる」と、さらに深刻な学習の問題に発展しやすいので、気を付けてください。
- m協応性に関して
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